母の一大事

わたしが
座敷わらし
だった頃…


その日は憂鬱な日だった。
寒くて、曇っていて、ともかく憂鬱な日だった。
何もやる気がしなくて、ヘッドホンをして、
鬱々とネットサーフィンをしていた。
昼になってこれじゃいけないと、
元気になるために、ひとり分のタジン鍋料理を作った。
湯気が出てちょっといい感じだったので、
軽く写真をとろうと思い、ケータイに手を伸ばした。
気づかなかったが、1時間半ほど前に着信があったらしい。
留守電を聞く。
電話は、母からだった。
「お母さんです‥。」
なんだかいつもと違って弱弱しい声だ。
「今‥岩手にいます‥。」
なんで!?
「じゃ。」
えー!!!


母は、青森で一人暮らし。
いつもはメールか、テレビ電話ではなすが、
緊急のときか、やむ終えない事情があるとき、
電話をかけてくる。
私の脳内に、岩手の三陸海岸の絶壁で、
猛吹雪にたたずむ母の姿がよぎった。
どどーん!どどーん!(太平洋の荒波の音)
母の身が心配だ‥。
即、電話した。
電話にでた母の声は、さっきとはうって変わって、
ハイテンションで、寿司屋のように威勢がよかった。
「ねぇ!電話じゃなくてテレビ電話しよ!」
「え、岩手じゃないの?もう家にいるの?」
ガチャ。
電話を切られた。
以下、テレビ電話で話したこと。
母はその日、天気がよかったので、
ひとりで岩手県までドライブをすることにした。
結局、どこへ行ったかというと、
座敷わらしが住むといわれる旅館、の、焼け跡。
去年火事で焼けてしまい、ニュースで話題になっていた緑風荘だ。
実家から車でそんなに遠くない距離にあったらしい。
焼け跡近くに神社があって、せっかくきたから、と
母はそこでおまいりをした。
座敷わらしは、旅館がなくなってしまったので、
そこの神社に集まっているのでは?といわれている。
私への電話はそこからかかってきたのだった。
あたりには人っ子ひとりいなくて、シーンとしていたそうだ。
ましてやどこかで話を聞いているかもしれない座敷わらしの存在…。
だから、いつもよりひそひそ声で
電話をすることになってしまったのだという。
もー!心配したがな!
「それでさ、帰るときに看板を見て気づいたんだけど、
あそこの神社、カメマロ神社っていうのよ!偶然!
だからね、お母さんね…」
そこが亀麿神社と知った母は、たまたま車につんであった
手作りのかめいちご(かめいちごの詳細はこちら
200匹と共に、お祈りしてきたという。

実家で
異常繁殖している
カメたち
画像クリックで
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(ここまで長時間、母の話につきあわされたので、
 タジン鍋がすっかり冷めてパサパサになっていた)
母は私と違って霊感が強いのだが、
あそこには、何かある、と感じたそうだ。
(もちろん、いいものがね)
焼ける前の旅館には、えんじゅの間というのがあり、
単なる普通の和室なのだけど、そこによく座敷わらしが出たそうだ。
その部屋で写真をとると、オーブという
丸い光の玉がたくさんうつるらしい。
そして、その部屋に泊まった人は、成功すると言われ、
予約は数年先までいっぱいだったらしい。
焼けてしまったなんて本当にもったいない。
まだあったとしても泊まりたくはないけど、
科学で解明できないミステリーが、
ひとつ消えたのは、非常にもったいないことだ。
今、その旅館は、再建募金を募っている模様。
緑風荘wiki
そんなわけで、12月末に再入荷したハイジスタンドの
かめいちごたちは、旅館が焼けて行き場を失った
座敷わらしたちの避難場所といわれる亀麿神社で、
なんか素敵でいいものが注入されていますので、
きっと、ただのマグネットよりは、ご利益があると思う、
というお知らせでした。
そういえば、亀麿神社に2匹おいてきた、ともいってました。
きっと、座敷わらしが、かめいちごで遊んでいることでしょう。
(しまった!妹に先越されてた

 
かめいちご:ハンドメイド