夜の喫茶店


フリーになると、打ち合わせをする時、
どうしても喫茶店を使うことになります。
汚い私の家にお客さまなど呼んだら最後、
長年のお得意様にも
「理由はいえないんですけど、
今回は他の人でいこうかなと思いまして…。」
と、逃げられるに決まっているんです。
私は喫茶店が大好きなので、
喫茶店打ち合わせだと、ウキウキしてしまいます。
でも、長居できる喫茶店というのは
三歩歩けば喫茶店にあたる世の中なのになかなかありません。
最近よく打ち合わせをするMさんは
静かで長居のできる素敵な喫茶店を街ごとに知っていて、
渋谷ならここ、新宿ならここ、と抜かりがありません。
こんなところにこんな素敵な喫茶店が!と
私はメモメモするのに忙しくなりました。
先日、他の仕事のIさんに指定されたのは新宿の喫茶店で、
そこは、50年前で時間が止まっている渋い喫茶店。
椅子のクッションは古めかしい重厚なベルベット。
競馬場帰り風のおやじが群れ、
古風な893ファッションの方もちらほら。
「禁煙席って何ですか?」みたいな
スモークが濃ゆく煙る喫茶店でした。
こういうタイムスリップ感覚の場所も全然アリですね!
喫茶店ミーティングはこれだからクセになります。
ところがその日、
打ち合わせメンバー8名が全員座れる席がなかったので、
急きょ、近くにあった談話室滝沢へ。
私のあこがれの「談話室滝沢」です!
「談話室滝沢」というのは東京のあちこちにあって、
「喫茶店」ではなく「談話室」と呼ばれているところが
私の想像力をかきたてていました。
店の方針か、どの店も外から見えない場所にあるし、
中は一体どうなっているんだろう。
個室あります、予約できます、と書いてあるので、
そこはかとなく、エロい感じもしたり。
政治家が秘密の会合に使っているのではないか。
和装のウェイトレスがいて、チップを帯の隙間に
そっとはさむのではないか、とか。
中にはいると、まるで温泉旅館のような雰囲気で、
レジは「フロント」とよばれている様子。
店の中央に池があって、白とオレンジの見事な錦鯉が泳いでいました。
客層は、中年、老人がほとんどで、
平日の昼間だというのにほぼ満席状態。
期待どおりの場所でした。
ドリンクは1000円均一。
ドリンク+ケーキ、ドリンク+軽食でも1100円〜1300円。
この値段のつけ方が
「喫茶店」ではなくあくまで「談話室」である、という感じがしました。
次は是非、ここの「特別室」(個室)で打ち合わせがしてみたいです。
セラニポージで「夜の喫茶店」という曲を作ったことがあるのですが、
あれは、どうしても私が作りたかった1曲でした。
変わり種の喫茶店や、落ちつく喫茶店も好きですが、
どこにでもあるようなそっけない喫茶店も好きなのです。
長居しすぎていると、必要ないのに豪快に掃除しにきたりとか、
「お水のおかわりいかがですか?」と、
水がたっぷりあるのに聞きにきたりとか、
嫌がらせの方法も様々。
どこまでそれに対抗するか、
その辺のかけ引きも喫茶店の楽しみのひとつです。