ひとりピクニック

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打ち合わせが延期になって、時間がぽっかりあいたので、
1年ぶりにエアロビをやってみた。
スタジオには50人以上の女女女だらけ。
中に1人だけ男がいて、レイバン風サングラスをかけていた。
絶対に、この中の誰かをつけてきたストーカーだと思った。
男を観察しながらエアロビしてたら、ひどい筋肉痛になった。
筋肉痛は、いつも遅れてやってくる。


次の日仕事で遅くなって自転車で帰る途中、雨にふられた。
雨の中、傘もささずに夜道を自転車でかっ飛ばす私は、
パンクな感じでいかしてた。
横断歩道すれすれで止まろうと、半分腰を浮かしながら、
身軽に少し先の地面に軽く着地した。
キマッタ!
と思ったらすべって転んだ。
体の内部をあちこち打撲し、
予期せぬところが予期せぬ時に痛むようになった。
筋肉痛と打撲で、身体ががらくたのようになった。
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さらに次の日、代官山で打ち合わせ。
終わった後、楽しい用事があったのに、
肩からどーんとだるくなって、
熱っぽくなって、関節がしくしく痛みはじめた。
楽しい用事をキャンセルしてトボトボ家に帰る。
頭痛もしてきた。
家に着く頃にはすっかり風邪をひいていた。
私は、冷たいフローリングに寝転がった。
その間いろんなことを考えた。
まず考えたのはこの状況についてだ。
不幸だ。
著しく不幸な気がする。
たった三日間でいろんな種類の痛みを背負った。
筋肉痛、打撲、風邪に伴う頭痛、関節痛…。
実にバリエーション豊かだ。
悪寒もする。
熱もあがっている。
何もしたくない。
むー。
しばし不幸をかみしめていると、
今度は、じめじめしたことばかり頭に浮かんできた。
最近、私ってダメだ。
何がっていうわけじゃないけどダメな感じだ。
前にも進めない、後ろにも進めない。
もう涙でそう‥みたいな、
ちょっと青春っぽいことですよ。
物理的な痛みに加え、心まで痛みだした。
ひとしきり深刻に欝になっていたところで、
テレビで「大奥」がはじまった。
女優をわざと不細工にとっとるなぁ。
それがかえってこのドラマに効果的だなぁ。
と、小池栄子に笑いながらいつの間にか真剣に見ていた。
番組終了。
さっきの青春っぽいもやもやをほったらかして、
「大奥」にウツツをぬかしていたことに
ふぁーっと怒りがこみあげてきた。
もう、最後通告だ!
お前にはもううんざりだ。
一生そうやって寝てろ。
と、一人説教大会が脳内ではじまった。
大説教大会がヒートアップしてきた頃、
くぅぅ、とおなかがなった。
なんか食べよう。
立つと地震がおこったかと思うぐらいふらつく。
やっぱり本格的に風邪だ。
残りものをレンジでちん。
食卓につこうとして、ふと、
「そうだ!今日は1人だし、ピクニック形式にしよう」
と思いついた。
フローリングに毛布をしいてあぐらをかいた。
食べ物を自分のまわりに並べて、
ピクニック風に食べ始める。

風邪ひきのひとりピクニックは楽しかった。
いつもよりおいしく感じた。
こうやって何か食べれるってのは、
度重なる不幸の中で、たったひとつの救いだよね。
と、思いながら無心で食べていたら、
体があったかくなってきて、気分も明るくなった。
あちこちの痛みも、若干やわらいできた。
風邪薬を飲んだら、青春の苦悩すらどこかへいってしまった。
ピクニックと食事のおかげで、普通に戻りはじめていた。
すると、相方が会社から帰ってきた音がした。
急いで明るい気分をマイナーにチェーンジ!
なぜなら、調子が悪かったことは、一応アピールしてみたいからだ。
たとえ、今はだいぶ良くなっていても、
調子が悪いといったほうが、いろいろ都合がいい。
哀れんでももらえるし、家事もやってもらえる。
ウソはいってない。
確かにさっきまでは悪かったんだから。
こうして私は、日々、泣いたり怒ったり
笑ったり計算したりしながら生きています。