喫茶アマゾン(テキストVER)

チャネリング中の高校生
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月いちトモコサンポッドキャストはこちらからどうぞ。↓
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(あ、でもちょっと微妙なとこピックアップされてるので
 初めての方は次回から聞くってほうがいいかもです。)
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その日、喫茶店にはいったら、
席がひとつしか空いていなかった。
席に座って隣を見ると、
この寒いのに露出度の高い服をきた女の子二人。
そして眉毛をきっちり描いたホスト風男性一人。


男「まずは、ライターを買って欲しいんです。」
女「え、どんなの?」
男「なんでもいいです。100円ライターじゃなければ。」
女「ジッポとか?」
男「あ、ジッポは逆にやめたほうがいいですね。
  オイルの匂いが嫌いなお客さんがいるから。」
女「よるご飯ってどうしてるんですか?みんな。」
男「まかないがでるから大丈夫ですよ。」
女「あ、そうなんだ。良かったー。」
女「なにげにそういうのって助かるよね。」
男「はじめは安いところからやってかないと、
  お客さんつかないから、状況見て、って感じすかね。
  その辺は、俺ら客引きがきっちりやってるから、
  あんまり安い額いってくる客はいれないから。
  女の子達は心配しなくても大丈夫です。」
女「じゃさ、お客さんから直接お金もらったら?」
男「それはいいんじゃないのかな。もらっておけば。
  誕生日にもらってる子、けっこういますよ。」
女「へぇ。楽しみ。」
どうやら、客引きと新人キャバ嬢の会話らしい。
その時、男の携帯がけたたましくなりだす。
ポポッピプー、ポポッピプー
女「その着メロ、ゲームっぽいね。」
男「あれ?知らない?この音。」
女「テトリス?」
男「トゥエンティフォーって知らない?CTUの内線の音。」
女「あ!そっかー。どっかで聞いたことあると思ったんだよね。」
男「ちなみに、こっちの音が外線の音。(そういって外線音を鳴らす)
  これ仕事以外の着信音に使ってる。」
女「すごい。こだわってるんですね。携帯。」
男「携帯だけはね。ちなみにコレ、最新モデル。」
ここから男の長い長い携帯自慢がはじまった。
携帯は商売道具でもあるから、
常に最新を持っていたい、とのこと。
特に今持っている携帯は音に強い、とのこと。
男「実は、僕、倖田來未ファンで、
  例の12週連続発売のシングル全部集めてるんですよ。」
女「かわいいよね。倖田來未。」
男「着メロも全部ダウンロード済。聞く?」
ここから、喫茶店にいるお客は、
強制的に「携帯大音量ライブ」の観客にさせられてしまう。
聞きたくなくても聞こえるからだ。
当人たちは、音がきれい!この曲知ってる!この曲好き!と、
感想をいいあって盛り上がっていて、
男は倖田來未いいっしょ?携帯の音いいっしょ?と
ご機嫌な様子。
他のお客は不機嫌そうにこちらをにらむ。
でも、相手が普通と違う世界の人々だと知って、
あきらめ顔でうつむく。
その隣に座っている私という客は、
映画のちらし1枚片手に持ちながら、
その紙ペラ1枚にもう20分以上釘付け。
随分その映画が好きなんだろうなぁという
風体を装っていた。
その状態で、私に携帯メールがきてしまった。
ぺっこっぺっこっぺっこっ
ぺっこっぺっこっぺっこっ
私のメール音は内蔵されている
「足音」という名の単音で
これ以上ないほど間抜けな音がする。
その音で、今まで盛り上がっていた隣の席が突然シーンとした。
「この音何?だれ?」
と、あたりをきょろきょろし始めた。
それと共に、喫茶店内のお客も、突然静かになった
夜の世界の人たちに驚いてきょろきょろしはじめた。
私の心拍数は異常に高なっていた。
皆の疑いの視線を背中に感じながらすっと立ち上がり、
ちょうど帰るつもりだったかのように
喫茶店を後にしたのだった。