ムシキングと暮らす

「そだてて!甲虫王者ムシキング」
「そだてて」のあとに
「!」マークがはいってるのは
どういうつもりなのかね。
制作した側の
「そだてて!お願い!」「買って!お願い!」
というギラギラした気分なのか、
ただなんとなく「おいらムシ!ムシだよ!」という
はしゃいだ気分をだしたかっただけなのか、
それは私にもわかりません。
ここは普通に考えれば、ムシが言ってるのでしょう。
「そだてて!僕を!」と。
「そだてて!」と無邪気につけてみた「!」が、
のちに、人間の首をこんなにもしめることになるとは。
誰が想像できたでしょうか。
(続きはバレ注意報発令中)


開発者の皆さんの愛虫が
一堂に会した珍しい写真。
スケルトンは非売品。
私のだけストラップナシで恥入‥。
犬にかわいい首輪を
買ってあげたくなる気持ちが
とてもよくわかった瞬間でした。


私も、ムシキングとともに寝起きし、戦い、
出会いと別れを繰り返したことがありました。
ムシと共に暮らしたあの甘酸っぱい日々‥。
「そだてて!甲虫王者ムシキング」は乱暴にいうと、
たまごっち状のもので、卵からそだてます。
えさをあげたり、特訓したりして、ムシを強化し、
通信対戦などでライバルと戦います。
戦うことが人生の主な目的なのです。
そしてある日、天命をまっとうし、旅立ってゆくムシ。
ひとり旅立つと、また新しい卵が発生します。
携帯型ゲームです。
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■ムシキングの朝。
朝は、はやいんですよ。ムシは。
まだ私が寝ている時間に「腹減った」と騒ぐんです。
ムカーっときます。
でも、ムシがやってることですから、
どうにもしようがありません。
ムシはムシですから。
■ムシキングの昼。
昼間はけっこう静かです。
この辺は助かります。
打ち合わせ中に腹減ったコールが出ても困りますし。
でも、ポケットの中で、常に私の訪れを待っているので、
電車にのっている時や、暇なときに時々かまってやります。
■ムシキングの夜
夜は20~21時には寝てしまうみたいでした。
夜ならたっぷりかまってやれるのに、
一度寝たら決して起きない熟睡型なのでした。
戦うためだけに生きている生き物ですから、
睡眠はもっとも大切なのでしょう。
ムシは戦士なのです。
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こんな生活を毎日毎日くりかえします。
時々「アダー」という名のおやじがふいに訪れて、
私の大切なムシに突然変異をおこそうとします。
追い払えればいいのですが、油断して追い払えないと
「アダー化」という現象がおきて、とんでもないことになります。
蛾が、もんしろちょうのさなぎに
卵を産み付けるようなものなんだと思います。
アダー化がおこると「早死に」するような気がします。
でも、アダー化がおこると、ヤクをやったみたいに
ムシがパワフルになります。
でもすぐ死にます。
ちょっとリアル。
そんな感じで本当にけっこう長い間、
一緒に暮らしたのです。ムシと。
しかし、私にも家庭がある。
妻もいれば子もある身。(うそですが)
いつまでもムシと蜜月を過ごすわけにはいかなかったのです。
そしてここから重要な局面をむかえるのです!
人間性を試される瞬間なのです!
ムシは際限なく死んでは生まれ、死んでは生まれをくりかえします。
そのループを断ち切るには相当の勇気がいるのです。
電池を抜く?
それも考えました。
でも、まるで心臓をえぐりとるような気がして、
それだけははばかられました。
えさをあげない?
ええ。
私はそっちを選びました。
おかげでムシは一日中泣きわめいていました。
「腹減ったー」「腹減ったー」と。
「そだてて!」「そだてて!お願い!」と。
「!」マークがこれほどつらかったことはありません。
ある日、私はムシの断末魔を聞くのにたえきれず、
サウンドをオフにしました。
こうしてムシはしばらくして息絶えました。
なんなんでしょう!
この、そこはかとなく残るうしろめたい気持ち。
これからは残忍な殺虫者という十字架を背負って、
生きていかねばならないような重圧。
虫界のお尋ね者。ウォンテッド。
ムシがムシらしくわがままに生きているからこそ、
こんな気分になってしまうのでしょう。
この複雑な気持ちは、是非子供のうちに味わっておきましょう。
あなたのお子様にも一匹!