耳狩り


フルーツサンド作った


耳がない白い食パンは、
子供の頃のあこがれだった。
最近、パン界に白いパンブームがきて、
私にとって、とてもいい時代になった。
ヤマザキのふんわり食パンとか、
パスコの豆乳ロールは大好きだ。
しかし。
今日は事情が違う。
フルーツサンドになった君は、
主役だと思い込んでいるみたいだけど、
そうじゃないんだ。
正直、いらなかったんだ。
このフルーツサンドは、副次的産物。
本当は耳だけが欲しかったんだ。


パンの耳狩りをしたのは、何年ぶりだろう。
会社を辞めた直後、一時的に家計が苦しくて、
朝飯用のパンの耳を求めて、
あちこちのパン屋をはしごしていたことがある。
一度に大量の耳狩りをしたら、冷凍庫にいれて保存。
重宝したものだ。
皮肉なことに、その頃の住所は白金台だった。
白金台の貧乏人、という身分をちょっと気にいっていた。
住所だけで、化粧品カウンターとかの対応がずいぶんちがう。
でも実はびんぼーなのですが!と心の中でクスクスしていたものだ。
金持ちの街白金台では、パンの耳は、
ペットの餌としてポピュラーだった。
時には、麻布のパン屋にまで足を伸ばした。
苦労はしたけど、手にはいりやすかった。
そして久々の耳狩り。
成果はなし。
この辺のパン屋は全滅だ。
でも、よく考えたら、大手チェーン店のパン屋ばかりだった。
きっと末端の店は、パンの耳がでる作業はしないのだろう。
しょうがないので、長い普通の食パンを買ってきた。
白い部分はフルーツサンドにして、
耳は数日間、乾燥させてカラカラにする。
黒砂糖を少量の水で煮て、とろとろにしたものを
パンの耳にからめて、揚げる。
パンの耳カリントウの出来上がり。
karinto.jpg
これをどうしてもつくりたかった理由は、
相方がラスク好きで、まずいラスクばかり
買ってくるのに辟易して、ちょっと待ちな、と。
ラスクに似た食べ物でもっとうまいもんあるぜ、と。
パンの耳カリントウ、知ってるかい?と。
あたしの子供の頃のおやつの定番だったんだぜ、
今度作ってあげるよ、
‥といういきさつがあったから。
それはさておき、さっそくいただいてみましょう!
ひとくち食べて、絶句した。
なにこれ!?
あれはもっとサクサクで、もっと軽くて、もっとあっさりしていた。
こんなにベトベトの油ギッシュじゃなかった。
固いし甘いしトゥーマッチ!
本物のカリントウには近いけど、
思い出のカリントウはこんなもんじゃない!
もっとおいしいんだ!
だめだ。
お母さんに、なくしたレシピを探し出してもらわないと。
相方がまた、まずいラスクに走ってしまう。
食後、相方とふたりで胸焼けをおこして、
仲良く胃薬を飲むはめになったことは、
言うまでもありません。