(南国のリクガメ)
お休みもそろそろ終わりそうですが、
こちらは山も谷もなく淡々と仕事をしています。
おとといのニュースにて。
旅行先から帰ってきた人へのインタビューで
「今年も思い出がいっぱいできました」
と答えてる人がいて、ショックをうけました。
単調な毎日で、昨日の昼に何を食べたかも思い出せないっていうのに
思い出つくっちゃった人がいるんです。
「今年も〜できました」と過去形にしてしまうあたりに、
「一年分楽しみましたから、もう楽しみなんていりません。」
という自信までみなぎっててくやしい。
くやしいので、去年、私が旅行にいった話を聞いてください。
私だって時には旅にでるんです。
去年は、あちこちに田舎に帰るとか、体調が悪いとかなんとか
ごにょごにょいって一週間休みをとりました。
(でも、本当に調子が悪かったんです。)
そのとき、一番心配だったのは、当時まだ飼っていたリクガメの世話のこと。
大食漢だし、おなかがすくとこの世の終わりみたいに暴れるので、
一週間も家を留守にするのは心配です。
旅行は11月で肌寒くなってきた頃。
リクガメに寒さは禁物です。
ケージの温度をあげるために、暖房用ライトを常につけてなければならないし、
暴れてライトが割れたりしたら、カメも心配だけど火事も心配。
そこで、弟に時々様子を見に来てもらうことにしました。
えさをやって様子みるだけだから。(実際はそれだけでは終わらない)
たまーにうんことかするから。(毎日する。しかも寒いからゲリ。)
そしたらそこだけ軽くふいといて。(軽くじゃすまない。ケージ中うんこだらけだ。)
簡単だから!(簡単なわきゃーない。)
謝礼だすから!(ペットホテルじゃ預かってくれないから。)
と、丸め込んで、おやつや漫画も用意して、
珍しくいたれりつくせりな状態にしてから、南国へ旅立ちました。
旅の宿泊所は山頂にありました。
珍しい小動物を飼っているという噂があったのですが、
すぐに、それが何なのか知ることになりました。
フロントと部屋は別棟にあり、外を通ります。
途中の道に、うちのリクガメと全く同じ種類のカメが二匹暮らしていたのです。
なぜ、東京からはるかかなたまで逃げてきたのに同じカメが!?
しかもほぼ同じサイズ!同じ顔!
カメのことを忘れて楽しむどころの話ではありません。
残してきたカメのことが心配になってくるのも当然です。
生きてるかな。死んでるかな。
家に電話して、電話がつながらなかったら、カメが暴れてライトがこわれて火事になって
丸焼けになった証拠だ、と、携帯から家に電話をかけたのですが、
なんと!全然つながらないのです!
深夜すぎまで電話をかけまくったのですが、まったくつながらず‥。
コレ、絶対なんかあったね!
そう思いはじめると、食欲はなくなるし、心配で高熱が出るし、眠れないし、
南国なのに寒気がするし、薬づけだし。
来たことを後悔しながらの南国スタート。
次の日もひたすら電話です。
宿泊所を出て山頂をくだってゆくと、ふと携帯がつながって、
家の留守電が聞こえました。この時の安堵感はすごかったです。
宿泊所は電波がはいりにくかったために、
うまくつながらなかっただけだったらしく、
やっと旅行を楽しむ余裕が出てきました。
しかし、楽しんだのもつかぬ間、
こっちのカメ達の近くを通るたびに、あっちのカメの様子が気になってくる。
そういえば、2日に1回は見にいってくれるといっていた弟からの連絡が全くない。
電話をすると、まだ見にいってない、とのこと。
「すぐいって!!」
「うん。いけたら。」
「絶対いって!!」
「うん。多分。明日いけたらいく。」
あぁ、しまったー。
そういえばこの人はこういう人だった。
こういうあいまいな人だった。
旅行日程が中盤にさしかかった頃には、観光もせずに、
宿泊所で飼われているカメばかり見てすごしていました。
こういう広くて暖かいところで飼ってあげたいなぁ、とか。
こんなものも食べるんだぁ〜、とか。
飼育係がやってるカメの逃亡対策に感心したり、
糞のにおいがうちのと全然違うな、とか。
そしてその夜、ようやく弟から電話が。
「ねぇ。。これなに?なにがおこったの?なにごと?」
という第一声。
「尋常じゃないよ。」
「どんな感じなの?」
「下に敷いてあるのが何もかもひっくりかえって、
キャベツが茶色くなってて‥どろどろしたものが‥んで、においが‥。」
それぐらいの修羅場は楽勝で予想していました。
あの状態をはじめて見たら尋常じゃないと思うのも無理もない。
カメが機嫌が悪いときに行われる「糞祭」が開催されただけのこと。
でも、この電話でうちのカメがとても元気だとわかって、
ようやく私は旅を楽しむことができたのです。
空港でインタビューされたら、
「今年はたくさん思い出できました」
と過去形でいいきっていたことでしょう!
さて、肝心の旅の話はまた機会があったら、
ということで。