付箋をするほど熱心なのは
私のほうではありません
うちの本棚には、
おいしいラーメン店の本はありませんが、
おいしいスイーツ店の本は何冊か並んでいます。
数冊ある本の中で
(上の写真の本ではありませんので)
特にレコメンドされている店がありました。
そこで、相方と私は、ある休日を、
本で大々的に紹介されているP店で、
お店一押しのケーキを食べることに
使うことにしました。
家からは遠かったので
ちょっとした小旅行となりました。
小洒落た街の細い通りに面した店は、
異常な混み具合で、店の外にまで
人がこぼれていました。
しかし、今日は丸一日待ってでも、
P店のケーキを食べる覚悟できた我ら。
さわやかな笑顔で待ちます。
40分以上待って、やっと座りました。
私は店の2番人気のケーキを、
相方は、1番人気のケーキを注文。
お味のほうも、店を代表するものになっているはず!
1番人気のケーキ
そして来たケーキがコレ。
見るからにおいしそうで、繊細な飾りつけ。
写真で見て、外見は知っていたのですが、
やはり目の前で見る本物のケーキは迫力満点です。
ところが。
一口食べて、二人とも苦味ばしった大人顔をしました。
濃いし、甘すぎるし、くどいんです。
しかし二人とも涼しい顔で、
「けっこう本格派?」だの
「濃厚だね。」だの
「味が濃いとお茶がおいしく感じるね。」だの
好意的なコメントをしていました。
しかし、その後は言葉が続かず、
もくもくとケーキと格闘しました。
しかし、ケーキも後半にさしかかってくると、
さすがにきつくなってきました。
ふと、相方が言いました。
「これ、本当においしいのかな‥。」
えー!!
天地がひっくり返るような発言です。
そうか!いいんだ!
我慢しなくて良かったんだ!
私だけじゃなかったんだ!
そこからは、堰を切ったように饒舌になりました。
正直認めるのがくやしかったのです。
これが、パリとかで修行してきた
本格派パティシエの間でおいしいとされる味ならば、
本格派の味は自分の口には合わないってことか、と。
でもおいしくないものはおいしくないんだ!
2番人気のケーキ
あらためて、まわりを観察したところ、
実は、笑顔のない沈みがちな客席に気づいたのです。
我らだけじゃなさそうなんです。
この味に疑問をもちつつも、
それを言えないでいる人達は。
お客の70%ぐらいが1番人気を。
20%が2番人気を食べていたのですが、
半分食べてフォークを置く人がほとんど。
ある人は、ケーキを一口大に切るのですが、
それをさらに、三等分ぐらいにして、
小さく小さくして食べる戦法をとっていたし、
そしてある人は、天辺のクリームをフォークでつつき、
クリームだけをちびちびなめる作戦で。
まるで、居残り給食をさせられているかのように
ケーキ半分を残してほおづえをつき、
物憂げに、外の景色を眺める女性までいました。
かなり、おつらそうです。
今ここで立ち上がって
「王様は裸だ!」
と言って、このケーキについて、しゃべり場したい!
有名店のケーキなので、
ここで残して帰る勇気のある人はいないだろう。
残した=味オンチと、後ろ指をさされると思っているのだ。
みんなさもおいしいかのようにふるまっている。
しかし、全然フォークがすすんでいないのは明白だ!
笑顔がないではないか!
我慢をしなくていいんだ!
見栄はっちゃだめだ!
君たちの本音を教えてくれよーぃ!!
我々は、今ここで突然立ち上がって
お客を扇動する様子を
なまなましくシミュレートして大いに盛り上がり、
とても有意義なティータイムを過ごしました。
帰り道、口の中があまりに甘かったので、
キオスクで、酢だこを買って、
ネズミみたいな顔で(すっぱいので)
食べ食べ帰りました。
明日は月曜日。
また平日がやってきます。