俺はケン、という名の、フィギュアだ。
ケン本体のキャラとは全く関係ない。
ただのフィギュアだ。
俺たちはケンシリーズのひとつだ。
これまでも、小さい器、フィギュア、マトリョーシカ、と
地味に仲間を増やしてきた。
それらは全て、ハイジの姉御によって作られたものだが、
東京ハイジグッズのヒエラルキーの中では底辺に位置する。
なぜなら、東京ハイジグッズってのは、
妹ハイジさんの頭から生まれてきたもんで、
見た目も愛らしくポップな商品が主流だからだ。
うちらの姉御が作った、通好みのテイストは、異端だ。
愛らしさはあったとしても、ポップさがないだろ?
そのせいで、ハイジグッズの中にまぎれている俺らは非常に肩身が狭い。
撮影の機会なんかあったりしても、ハイジグッズの中にいたら、
俺らにピントがあうことはまずない。
一応、ハイジスタンドには置いてもらっていたが、
晴れの舞台、例えば、香港出店やシンガポール出店、
また、数年前に行われたKawaii展なんかでは、
当然のごとく、お声がかからない。
寂しいものさ。
そんな俺らに、ある日、思いがけないハプニングが起こった。
東京ハイジに海外向けテレビ取材のオファーがきたんだ。
クリエイターへのインタビューということらしい。
テレビ局の人と連絡をとっていた妹ハイジさんに、姉御が
「当日、何か持っていくものはないか?」
と聞いたら
「何もいらない。」
という返事が帰ってきた。
しかし、姉御は、出かける寸前に、
俺らケンシリーズをつかんでポケットにいれたんだ。
現場に着くとまず、
「グッズを撮影したいので、机に並べますがよろしいでしょうか」
と、テレビ局の人に言われた。
その日、妹ハイジさんが用意したグッズは、定番のものが少しだけ。
並べるにはかなりしょぼい規模になりそうだった。
そこで、姉御は、お気に入りの俺らを控えめに出したんだ。
グッズを並べるテレビ局の人には、ケンシリーズの
東京ハイジグッズにおける立場なんてわかりっこなかった。
並べる時、テレビ局の人は、知らずに俺たちをど真ん中に並べた!
並みいる歴代東京ハイジグッズを差し置いて、
ケンシリーズをセンターに置いたんだ!
姉御がスポットライトがあたる俺たちを見て、
遠くで涙ぐんでいるのが見えた。
中央にズームイン
取材はつつがなく終わり、東京ハイジインタビューは、
NHKワールドTVのimagine-nationっていう番組で見られるんだが、
テレビで見るのはアンテナをどうのこうので日本じゃ面倒臭いそうだ。
iPhoneアプリを使えば日本でもみれるのだが、
iPhoneじゃない俺にはわからん。
純和風なたたずまいの俺らケンシリーズは、
海外でどういう誤解をうけるのだろうか。楽しみだ。
ケンシリーズの海外進出、考えてもいいかもしれないな。
まだ放送もされていないのに、
東京ハイジには、インドネシアから、乳酸菌飲料の
マスコットキャラに関するオファーが来たらしい。
まぁ、姉御には関係ないらしいが。
放送は10/5。
海外に住む人は是非番組を見て欲しい。
俺たちが、スポットライトを浴びているところ、
目に焼き付けて欲しいんだ。
じゃあな。
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