残暑お見舞い申し上げます


あれは6月だった。
まだ肌寒いのに、人々は夏に向かって両腕を広げ、
「カモン!サマー」
と、先走ったタンクトップ姿で鳥肌をたてながら夏を求めていた。
ところが今、8月。
6月よりも格段に気温は高いのに、
タンクトップではなく、先走った長袖姿を多くみかけている。
人々は確実に、守備にまわりはじめた。
電車に乗っても寝ている人ばかり。
早く夏から逃れたくてしょうがない東京の人々。
そんな中、私、なぜか元気!
毎日、ペースを落とさず曲をつくリ続けている。
そして、よく食べ、よく寝る。
夏ヤセどころか、胴回りがズーンと太ったぐらいで、
1年ぶりぐらいにスポーツクラブにもいってみたし、
最近はニンニク料理を積極的に摂取しているし、
けっこう元気!
さて、先日のこと。
急な打ち合わせで、私は某ホテルの喫茶店へ向かっていた。
外は相変わらずひどい暑さだが、
タンクトップに帽子とサングラスというなりは、
身も心も軽快にした。
打ち合わせ場所へはジャストにつけそうだ。
ホテルの玄関前のタクシー乗り場付近にさしかかっていた。
タクシーがずらりと並んでいる。
歩きながら考えた。
お客が誰も並んでいないので、もしかして、
先頭のタクシーの運転手が、私を客だと勘違いして、
気をきかせて自動ドアをあけちゃったりしたら、
後続のタクシーに対して恥ずかしいだろうなー。
と、考える予定だったが、しまいまでいかず
「後続のタクシーに対して〜」のくだりに
はいるかはいらないかのところで、
いきなり、頭が真っ白になった。
「がっ」とか「だっ」とか「じゃっ」とか
なんか意味不明のことを言いながら、
私はアスファルト上をズサーッと音たててスライディングし、
地球に、バチーンと両手で平手打ちをかましていた。
タクシー運転手達の視線を感じたので、
私はうす笑いを浮かべて何食わぬ顔で立ちあがり、
急いでその場を離れた。
タクシー乗り場の死角で、あらためて自分を見てみると、
ちょっとした怪我人の様相を呈していた。
ガラスの指輪をしていたので、
割れた細かい破片が、手のひらにみっしり埋め込まれていたり、
針金のブレスレットが腕にささっていたり、
アクセサリーおそるべし!
手のひらがぢーんとして感覚がない。
そして、ひざ小僧から血が流れていた。
小僧が怪我をしているなんて!
久しぶりだ。
赤ちん塗ってみてぇ〜〜。
私は子供のように大騒ぎしてしまった。
ちょうどその時、妹から携帯に電話がかかってきた。
「もう、皆さんお集まりだよ!なにやってんの!」
「転んで大怪我したのさ!血だらけなんだ!」
とかなんとかいって電話を切り、ホテルのフロントへかけこんだ。
「そこで転んで血が出たんですけど、ばんそうこうもらえませんか?」
そしたらもう!
ホテルの人たちって本当にやさしいよ。
3〜4人がやってきて、かわるがわる
傷口を消毒したほうがいいですよ、とか
少し休んでいきますか?ご案内しますよ、とか
なんか、本当に、新高輪プリンスの人たち
全然関係ないのに、申し訳なかった。
血をふいて、ガラスを摘出しばんそうこうをはったら
意外と大騒ぎするほどでもなかったなー、テヘッ。
って感じで…。
打ち合わせ場所に15分遅れで登場。
そこでは、私のことを心配して、青くなっている皆さんが…。
しかも初対面の方もいらっしゃる。
でも全然、私、騒いだわりに、血みどろでも大怪我にも見えないし、
もう穴があったらはいりたいのに、過酷な名刺交換。
「遅れまして。東京ハイジ姉、の、トモコです。」
もう名刺もいらないほど、覚えられてしまったに違いない。
なぜ、段差も何もないだだっ広いところで転べたのか、
未だに深い謎につつまれている。
永遠のミステリーだ。
「それはね、疲れているんだよ。」と、美容師さんにいわれる。
「そうなのかな。」
「髪も疲れているのでトリートメントしていきなさい。」
「はい。」
「五千円ね。」
「え!」
こうして、私はなすがままにトリートメントをし、
お財布も気分もリフレッシュ!
まだまだ夏は続きそうです。
ライブもあるなぁ。。。