欲望の夏

梅雨あけました!夏がきました!
ある夏の日、私は愛用のデジカメを汗ばんだ手で握りしめ、
熱い期待を胸に、商店街へと繰り出したのでした。


着いた頃には、汗でびっしょり。
鼻の頭がじりじりと日焼けしはじめていました。
これぞ、絶好のアレ日和だ!

ところが。
商店街はこれから大エベントがあるとは思えないほど
静まり返っていました。
人がいないから静かなのではなく。
人がたくさんいるのに静かなのです。
群集は静かにそわそわしていたのです。


男女比でいうと、8割が男でしょうか。
平均年齢は高く、一人で来ている人ばかり。
カメラオヤジ達が熱っぽい眼差しを、
パレードのスタート方向へ注いでいます。
カメラの高級感もいぶし銀な感じでデジカメ率低し。


男たちはアレを待っているのです。
アレ。
それは、興奮と躍動のリズム!
薄布をまとった美女の舞い!
いえいえ。そんな下心なぞありません。
ニ度とこない今年の夏の風物詩を
カメラの中に切り取るためにきたのです!
…とでもいいたげなひらきなおった態度で
アレを待っているのです。


西日に照りつけられながら、じりじりと待っていると、
ついに遠くで雄叫びがあがり、パレードが動き出しました。
狭くて小さな商店街。
沿道には人がぎゅうぎゅうに立っています。
なんで、こんな小さな商店街が、
こんな素敵なパレードをやろうなんて思ったんだろう!


ついに、パレードの先頭が、
私の立っている近くにもやってきました。
か、かわいい〜!
先頭の人の衣裳はゴージャスなのよね。


沿道は徐々に押しあいともみあいの嵐。
一番いい撮影ポイントを獲得するために、
男達の必死の攻防戦がはじまりました。
必死の男達相手に私のよーな
か弱い女が太刀打ちできるわけがありません。
しかも、踊り手が近付いてくるに従って、
人がさらに押し寄せてきます。


そんな中、私もデジカメの身軽さを生かしてパチリ。
パチリパチリパチリ。
あ。なんだこいつ。
(シャッターを押した瞬間に横から他人のカメラが…)


邪魔すんな。アタマ!


ギャー!出てくんな!はちまき!


だー!


うわーん。


もじゃ頭。やめてー。

踊り手を撮影するのは至難の技。
私のカメラにはこんな写真ばかり…。
踊り手が去ってゆくと、今度は楽隊がやってきた。
楽隊は楽勝で撮影できる。
なんなんだ。この違いはヨ。
オヤジ達は、踊り手さんにくっついて大移動。
ねぇ。楽隊も撮影しようよ。みんな。

音の洪水の中にいると、こっちのカラダも動きます。
サンバのリズムって、前から知ってたけど、
生で聞くのは格別に感動するなぁー。
涙がでそう。

こうして、サンバパレードは商店街のはずれへ
踊りながら消えてゆきました。
なんとか撮れていた本日のベストショット。