新橋観察


はじめて新橋におりた時は驚いたっけなぁ。



なにがって…。
駅前の広場にあるアレですよ。
アレはおやじのロマンだ。



昔は、鉄道模型が趣味だったんだよ。
といって遠い目をするおやじ。
すっかり汚れちまった心の片隅に、
残しておきたい童心の部分。
それを象徴するものがこの機関車なのだろう。


あちこちの街が新しくなっていて。
この辺もすぐ近くに近代的な汐留駅が出来たばかり。


しかし新橋駅前にだけは昭和の風情が残っている。
おやじ達が、新しくなるのを許さないのだろう。


他の街でもよくみかける古雑誌売りも、
新橋のは、いわくありげな片目の老犬を連れていて、
やけにこの街に似合っている。


おやじがめざすダンディといえば三浦友和。
ファッションリーダーといえば三浦友和。
ポスターを横目でみながら、
もう少し痩せるか、などと考えたりするんだろう。


定年間近のおやじは老後のことも常に頭にある。
駅前には墓石屋。
それだけニーズがあるってことだ。


社会に負けたおやじ達が、
看板持ちやホームレスとなっても暮らしていける。
そんな優しさもある。


ガード下には段ボールハウス。


網っぽい外観のニュー新橋ビルの中がまたすごい。
パチンコ屋に立ち食い屋、マッサージ屋、メンズエステ。
チケット売り、宝くじ、たばこ屋、ネクタイ屋。


おやじアイテムがなんでも揃う、
おやじ仕様の109のようなものなのだろう。


すっぽんエキス、鮫の軟骨、マカ‥。
疲れきったおやじに、
普通のドリンク剤はもう効かない。


ソバ屋の名前があずみだというのもいい。
小山ゆうの描く豊満で人情深い女は、まさにおやじのアイドル。
「あずみ」と聞いただけで癒されるのだろう。


新橋駅前にはたくさんの人が座っている。
こんなに座る場所がある東京も珍しいのではないか。


電車の乗り換えで立ち寄っただけだったのだが、
なんとなく写真をとりたくなってしまって。
ついつい長居をしてしまった。


というわけで、私。
昨日は新橋で道草食ってたんですよ。