この画面の中に
父と私がいます
父の希望で、二人でNHKを見学に行くことになった。
なんでも、所定の時間に所定の場所に集合すれば、
昼からの公開生放送スタジオパークからこんにちはを
スタジオの中で観覧できるらしい。
つまり、テレビに映るかもしれないってこと。
テレビに映るんだったら録画をしていこうと思って、
「公開生放送、参加するよね?」と聞いたら、
「お前がテレビに出ればいい。
オレはスタジオの外から見てるから。」
と言って、全く乗り気でない。
父をほっといて、一人、中で見るわけにもいかんと思って、
本当に単に放送局の見学コースを歩くだけ、
というつもりで渋谷のNHKへ出かけた。
ところが、見学コースはあんまりおもしろくなくて、
午前中に見終わってしまって、
ちょうど、生放送がはじまる時間になっていた。
もうスタジオ内観覧は閉め切られていたけど、
外から観覧してみることにした。
テレビには映らないけどさ…と思ったら、
「毎回ゲストが来て、玄関からスタジオへはいるまでを
観客が花道を作って見送るんだよ。
だから映るかもよ。」
と父がいう。
「えー。録画セットしてこなかったよー!」
私は急いで妹と弟に電話。
もし、家にいたら、生放送を録画してもらおうと思ったのだ。
ところが、妹はママ友達の家に遊びに行くところだったし、
弟にいたっては、ミーティング中だったりして、全く使えない。
それもそのはず。
その日は平日の月曜日だったから。
テレビに映るかもしれないけど、もうしょうがないや、
と思って、花道に並ぶ。
父はいくら呼んでも、絶対映らない場所に隠れて出てこない。
私は、絶対映りそうな前の方にスタンバイ!
この日のゲストは松本明子さん。
テレビカメラが観客をなめながら花道を通ってゆき、
私のほうにカメラが向いた!と思ったら、
テレビ画面が切り替わり、テロップ表示に。
な、なんだよ!
今、あたしを避けたね?
にくたらしいほどあまりにあまりなタイミング。
映る気まんまんな下心を見透かされたか。
その後、ゲストのトークをガラス張りのスタジオの外で見学。
父も楽しそうに、松本明子の軽快なトークに聞き入っている。
確かに話がおもしろい!
この人、すごい!
隣の父が時々、私に耳打ちしてくる。
「今カメラに写っていないデスクにいる女の人は、
この後の生活の知恵コーナーを解説する解説員なんだよ。」
へぇ、そうだったんだ。あの人。
「あの女の人の隣の席が空いてるだろ?
そこに小川アナがさっと移動してきて座るんだよ。
ここの移動時間は短いから小川アナも大変なんだ。」
へぇ、だからあの男のアナウンサー、
ちょっとそわそわしてるんだな。
「生活の知恵コーナーが終わったら、
ゲストがサインするから、それを皆に見せて終わりなんだよ。」
へぇ。だから机に色紙が置いてあるんだね。
…って!
父は、スタジオパークにものすごく詳しくて、
細かい段取りを全部知っていた。
何で??
何でなんだ??
父!
何者?
もしかして、スタジオパークマニア?
だったら、外で見るとか言ってないで、
スタジオ観覧すれば良かったのに!
テレビに映れば良かったのに!
変なところで遠慮するんだから!